ビジネスチャットが浸透してきているものの、「社内のコミュニケーションツールはメールがメイン」という企業もまだまだ多いのではないでしょうか。
しかしメッセンジャーアプリなどに慣れた人だとチャットのほうが親しみやすく、メールに苦手意識をもつこともあるでしょう。
社内独自のメールに関する文化やルールがある企業も多いため、「ルールに馴染めない」「面倒」と感じている人もいるかもしれません。
そこで今回は、職場で社内メールを使っている374人にアンケートを実施し、「社内メールで改善してほしい内容」を調査しました。
- 調査対象:職場で社内メールを使っている人
- 調査期間:2022年7月19日~8月1日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:374人(女性194人/男性180人)
- 回答者の年代:20代 28.6%/30代 35.6%/40代 24.3%/50代 10.7%/60代以上 0.8%
社内メールで改善してほしい内容ランキング
「社内メールで改善してほしい内容」を聞いたところ、回答は以下のようになりました。
1位になったのは「独自のルールが多い(112人)」です。
2位「システムが使いにくい(111人)」、3位「自分に関係ないメールが届く(31人)」、4位「他ツールを利用したい(16人)」と続きます。
以降、5位「ルールが曖昧(15人)」、6位「重要なメールが埋もれる(12人)」、7位「テンプレートが欲しい(11人)」の結果となりました。
ランクインした項目は大きく「職場のルール・人に起因する不便さ」と「メールソフトに起因する使いにくさ」に分けられます。
「ルールが厳しくて面倒」「他の人がルールを守らないから迷惑」といった不満から、「メールソフトにほしい機能がない」といった不満までさまざまですね。
なお「改善したいことはない」と答えた人は18人でした。
では具体的な回答を紹介します。
1位 独自のルールが多い
- メール送信エラー防止目的で、「同じ内容のメールを2回送る」というルールがある。めんどくさいので止めたい(25歳 男性)
- いちいち頭に「お疲れさまです」をつけるのが煩わしい(33歳 女性)
- CCの宛先がどんどん増えていく文化(38歳 男性)
1位は「独自のルールが多い」でした。
挨拶文や署名、宛名といったメールの書き方に関するルールについて、「面倒」「非効率」「意味がない」という意見が多く寄せられました。
「社内メールであれば、形式にこだわる必要はない」と考える人が多いようです。
メールに関するルールが「明文化されていない暗黙の了解」になっている職場も多いため、新入社員や中途入社した社員はとくに戸惑ってしまいそうです。
2位 システムが使いにくい
- いちいち「承知致しました」と返信するのが面倒なので、「承知致しましたスタンプ」や「承知致しましたボタン」がほしい(24歳 女性)
- メールの検索機能が使いにくいので改善してほしい(32歳 女性)
- メールボックスの容量が少ない(45歳 男性)
「システムが使いにくい」が2位。
「容量が少ない」「メールや宛先を検索しにくい」という声が目立ちました。
また「通知がわかりにくい」「スタンプ機能がない」「既読確認できない」という不満も多数。
いずれもメッセンジャーアプリやチャットでは充実している機能であることから、他ツールと比較して「メールは使いにくい」と感じている人も多いことが伺えます。
3位 自分に関係ないメールが届く
- 自分とは関係ない内容のメールが多く届く(25歳 男性)
- 自分に無関係なシステム情報が1日に何通も来るのをどうにかしてほしい(33歳 女性)
- 知る必要のない内容のメールが選別なくCCで送られてくると、時間を無駄に費やしてしまいます(49歳 男性)
3位は「自分に関係ないメールが届く」です。
「業務にあまり関係のない一斉送信メール」や「なんとなくCCに入れられた情報共有メール」にイラッとしている人も多いとわかります。
自分に関係あるかないかは読んでみないとわからないので、「読んで時間を無駄にした」と感じることもあるでしょう。
重要なメールが「あまり重要ではないメール」に埋もれてしまうデメリットもありますね。
4位 他ツールを利用したい
- 「確認しました」など不要な返信が多いので、チャットのようにもう少し簡易なものにしてほしい(27歳 女性)
- 重要なことだけメールで、そのほかは他のツールにしてほしい(32歳 男性)
- メールでやりとりすること自体が手間と感じる。チャットを導入してほしい(35歳 男性)
4位は「他ツールを利用したい」でした。
「簡便性」「通知の気づきやすさ」などの面から、ビジネスチャットを導入してほしいと考えている人も多くなりました。
ただ長文を送るのにはメールが適しているので、メールとチャットを併用する方法もアリかもしれませんね。
5位 ルールが曖昧
- 何を社内メールで周知すべきかを明確にしたい(33歳 男性)
- 人によって自由な書き方なのでルール化して欲しい(43歳 男性)
- CCを入れる範囲のルールを作ってほしい(58歳 女性)
5位は「ルールが曖昧」でした。
ルールが多すぎるとがんじがらめになって不便ですが、あまりに自由すぎるのも「使いにくさ」の原因になるようです。
とくに「どのメールを誰に送るか、しっかり決めてほしい」と考えている人が多くなりました。
伝達漏れがあってはいけない反面、CCを入れすぎると相手に迷惑になってしまうため、悩んでいる人が多いのでしょう。
ルールが明確化されていないせいでCCに入れる人を増やしてしまい、相手に「送ってこなくていいのに」と不快感を抱かせている例もありそうです。
6位 重要なメールが埋もれる
- いろんな部署からメールがくるので、何が最も重要なのかわからなくなる。【重要】という見出しのメールが多すぎる(31歳 女性)
- 対応依頼のメールは全てリーダーへCCするルールなので、埋もれてしまってリーダーに即対応してほしい依頼を見落とされることが多い(38歳 女性)
- 緊急案件として一斉メールが送信されてくるものの、たくさんの受信メールの中に埋もれてしまって分かりづらい(50歳 男性)
6位は「重要なメールが埋もれる」です。
受信メールが多いと、重要なメールが埋もれて見落としがちになってしまいます。
自分が見落とすのも、相手に見落とされるのも問題ですね。
「受信メールのフォルダ分け」「対応状況のマークをつける」などの方法で、埋もれたり見落としたりするのを防ぎやすくなります。
7位 テンプレートが欲しい
- 一括メールのテンプレートがほしい(38歳 女性)
- 定型文を作ってほしい。いちいち文章を作成するのがめんどくさい(50歳 男性)
7位は「テンプレートが欲しい」。
「定型文や一括送信メールのテンプレートがあればいいのに」と考えている人も多くなりました。
「Outlook」「Thunderbird」「Gmail」などではテンプレート登録が可能です。
社内に公式なテンプレートがない場合は、「わかりやすい」「丁寧」と感じたメールをお手本にして自分でテンプレートをつくり、登録しておいてはいかがでしょうか。
老若男女問わず、今はチャットやLINEといった気軽なメッセージのやり取りに慣れている人が大半です。
そのため、「ルール」や「常識」「きちんとした文章」などを求められるメールには、煩わしさを感じる人が多いでしょう。
また、「通知」「既読」「送信後の編集・削除」などの機能面、スマホでの送受信のしやすさといった利便性においても、チャットと比べてメールは劣っていると言わざるを得ません。
日系BPコンサルティングの調査によると、現在ビジネスチャットを導入している企業は4割以上にのぼるとのこと。
連絡ツールとして手間や不便さを解消するのであれば、ビジネスチャットの導入が有効なのではないでしょうか。
社内メールを使う理由ランキング
「社内メールを使う理由」を聞いたところ、回答は以下のようになりました。
1位になったのは「日々の報連相(180人)」です。
2位「依頼・指示のやりとり(99人)」、3位「情報共有するとき(55人)」と続きます。
以降、4位「資料を送付するとき(52人)」、5位「一斉アナウンスするとき(43人)」、6位「質問・問い合わせするとき(30人)」、7位「会議・イベントの案内(19人)」の結果となりました。
特別な機会ではなく、日々メールを使っている人が多いとわかります。
「仕事の指示」など、あとから見返して確認したい要件の連絡について、メールを使う人も多くなっていますね。
用途を問わず「文面を残しておきたいときにはメールを使う」という人も複数いました。
では具体的な回答を紹介します。
1位 日々の報連相
- 部署間での業務連絡をするとき(24歳 男性)
- 顧客から電話があったときの要件を伝えたり、部署内での連絡事項に使っています(45歳 男性)
- 上司に仕事の進捗状況を報告するとき(54歳 女性)
1位は「日々の報連相」でした。
とくに目立ったのは「上司への報告」です。
分量・形式がある業務報告の場合、チャットよりもメールが向いているからでしょう。
また部署内の相談や連絡であれば、その場で手すきのメンバーに声をかけて簡単にできます。
しかし距離が離れている部署間・拠点間の連絡ですと、相手の都合を考慮しなくていいメールが便利ですね。
2位 依頼・指示のやりとり
- 部下に仕事を指示するとき(26歳 女性)
- システム運用をしているので、他部署からの依頼受付にメールを使う(38歳 男性)
- 部下や他部署にお願いごとをする際や、上司からの指示を受けるとき(56歳 男性)
「依頼・指示のやりとり」が2位。
指示出しなどは口頭でもできますが、複雑な業務の場合は記録が残ってあとから見返せるメールが便利です。
「チャットを使っていない部署にはメールで依頼」など、相手によってチャットとメールを使い分けている人もいました。
3位 情報共有するとき
- 気になる記事やニュースなど、社内のみんなと情報を共有したいとき(26歳 女性)
- 客先情報の社内展開(33歳 男性)
- 対外的なメールを上司やチームで共有するとき(42歳 女性)
3位は「情報共有するとき」です。
例えば「顧客からのメールを転送するかたちで共有」などですと、メールが便利ですね。
ただ何でもかんでも共有したり、あまり関係のない人にまで共有したりすると「うっとうしい」と思われることもあるので注意が必要です。
4位 資料を送付するとき
- 作成した契約書を営業に送るとき(24歳 女性)
- ネットワークに接続していないPCにデータを送ってもらうため(38歳 女性)
- 書類ファイルのやり取り(45歳 男性)
4位は「資料を送付するとき」。
送付するものとして挙がったのは「契約書」「会議資料」「原稿」などでした。
データのやりとりには「ストレージサービス」「共有フォルダ」なども使えます。
しかし共有フォルダなどに入れると、相手がフォルダ内でファイルを探さなくてはいけないため、ピンポイントで送りたいならメールが便利なのでしょう。
ただあまりに添付ファイルのサイズが大きいと迷惑になったり送受信できなかったりするので、サイズには注意が必要です。
5位 一斉アナウンスするとき
- 全部署に連絡事項があるとき(35歳 女性)
- ビル管理会社からのお知らせを一斉配信するとき(41歳 女性)
- 同じ部署の人達に「長めの重要な連絡事項」がある場合、一斉送信用として使っています(49歳 男性)
5位は「一斉アナウンスするとき」でした。
全社員など広い範囲に周知したい場合にメールを使うという人も多いようですね。
メールであれば休みの人がいてもあとから読んでもらえるので、全員にアナウンスしやすいメリットがあります。
「長めのアナウンスはメールで」という回答もあり、内容によって他のツールや口頭アナウンスと使い分けている人もいると想像できます。
6位 質問・問い合わせするとき
- 「本社への商品内容の確認」や「他店舗の商品在庫状況の確認」などに使用(29歳 女性)
- 質疑のとき(32歳 女性)
- 上司・同僚・各部署の担当者へ確認や問い合わせをするとき(45歳 女性)
6位は「質問・問い合わせするとき」でした。
返事を急がない質問・問い合わせであれば、相手の都合を邪魔しないメールが便利ですね。
メール文面を考えることで、質問内容を精査できるメリットもありそうです。
また「在庫確認の問い合わせはメールで行うこと」など、職場によっては質問・問い合わせの内容により、メールを使うよう定められていることもあるでしょう。
7位 会議・イベントの案内
- 会社で行うイベントのお知らせ(25歳 男性)
- オンライン会議のURL共有のため(30歳 女性)
- 会議案内をするとき(46歳 男性)
7位は「会議・イベントの案内」です。
メールソフトから直接スケジュール表にイベントを追加できる機能もあるので、日程連絡はメールが便利ですね。
なお「会議の日程調整にメールを使う」という人もいましたが、メールでの日程調整は面倒で、集計ミスのもとにもなります。
メールでの日程調整が煩わしいなら、無料の「日程調整ツール」を試してみてはいかがでしょうか。
アンケートでは、社内メールを最も使用しているのが「日々の報連相」という結果になりました。
一方で、情報共有や社員への一斉アナウンス、案内など、複数人への連絡手段としてメールを使用している人が多いこともわかります。
「全てチャット」「全てメール」ではなく、1対1の日常的なやり取りには「ビジネスチャット」、形式的な連絡には「メール」のように使い分けるのもいいかもしれません。
社内メールの使用頻度
男女374名に「社内メールの使用頻度」を聞いたところ、回答は以下のようになりました。
もっとも多かったのは「週5回~毎日」です。
8割近くの人がほぼ毎日社内メールを送受信していることがわかりました。
また、毎日使う人に「1日何回メールを使うか」と聞いたところ、「10回以上」と答えた人が半数近くとなりました。
多い人だと「50回」という回答も。
メールの送受信だけでも大きな負担になっているのではないでしょうか。
一方で「1日1回」「1日3回」など回数が少ない人は、「メールチェックする時間や回数を決めている」とか「社内ではチャットがメイン」といった事情があるのかも知れません。
コロナ禍の現在では、社内コミュニケーションの手段として、対話ではなく「文字」によるやり取りが増した企業も多いのではないでしょうか。
メールの使用頻度が多いのであれば、メール対応が業務を圧迫しないような仕組みを作っていかなければなりません。
ただ長年の慣習として定着したメールのルールを変えることは簡単ではありません。
メールのルールより、「ツール」自体を変える方が、案外あっさりと浸透し、問題解決につながるのかもしれません。
調査結果から見えた社内メールの不満と改善に向けてのアドバイス
男女374人を対象に「社内メールで改善してほしいこと」を調査したところ、「職場のメールに関するルール」「メールソフトの使いにくさ」への不満をもつ人が多いとわかりました。
とくに「社内メールなのに挨拶文を求められる」「宛名の順番を職位順にしなくてはいけない」など、堅苦しいルールにうんざりしている人が多数。
「もっとラクにしたい」と思う人が多いのにルールが変わらないのは、長年の慣習を変えるのは難しいことを示していますね。
「いっそのこと社内連絡についてはメールを廃止して、チャットを導入してほしい」という人も多くなりました。
チャットは「挨拶文抜き」「ラフなコミュニケーション」が特徴なので、新しいツールを導入することで職場の文化が変わる可能性も。
「ルール」ではなく「ツール」を変えるほうが、案外簡単かもしれません。
最後に、当アンケート調査結果に対して、株式会社サプライズコレクションの篠原一貴氏から監修者として、改善に向けてのアドバイスをいただいたので紹介します。
■当記事の監修者、篠原一貴氏からのアドバイス
社内メールは本来、社内業務を円滑にするためのツールです。
にも関わらず、逆にメールを使うことで「余計な仕事」や「心理的負担」が増えるのは本末転倒ですよね。
とくに、「お疲れ様です」といった冒頭の挨拶文や、「正しい日本語」「礼節をわきまえた文章」などを暗に求められるメール独自のルールは、面倒に感じる人も多いことでしょう。
送る相手や文章の長さによっては、文面の作成・確認・推敲と非常に時間がかかります。
そんなメールを1日に何十通もやりとりしていれば、「メール処理で1日が終わった」などということも起こりうるでしょう。
メールのやり取りによって、仕事の効率が下がったり、業務が圧迫されたりするのであれば、「社内メールを簡略化するためのルール作り」や「メール以外のツールの導入」といった対策を講じる必要があるのではないでしょうか。
■監修者プロフィール
株式会社サプライズコレクション
メディア事業部
篠原一貴氏
2002年に高校を卒業後、インターネットの可能性に賭けてwebサイト制作を主軸とした会社を起業。
金融、結婚式余興、美容案件など、これまでに手がけたジャンルは多岐に渡る。
これまでの経験を活かし、2017年に海外FXの情報に特化したWebメディア「海外FXキラー」を立ち上げる。
現在は、上記メディア運営以外にインスタグラム広告や、TikTokなどでも事業展開している。